第13章 本格的な会社組織化とネクストレボリューション誕生前夜


3人から始まった挑戦のその先に

スマホ119を立ち上げた頃、私たちのチームはアキラ、ナナ、そして私の3人。そこに時折、高校生だった息子レオが加わる程度の、まさに「小さな家族経営」のような形でした。
しかし、時代の流れと共に「スマートフォン修理」という市場は急速に拡大していきました。画面割れやバッテリー劣化に悩む人々が増え、店舗にはひっきりなしに依頼が舞い込む。気がつけば、私たちの店は「地域の駆け込み寺」と呼ばれるようになっていました。

その一方で、仕事量の増加は人員不足やオペレーションの乱れを生むことにもなりました。3人ではとても回らない。アルバイトや新人スタッフを採用するようになったのもこの頃からです。


「組織」という壁に直面する

人数が増えると、それまでのやり方が通用しなくなる瞬間が訪れます。
創業時の私たちは、互いの顔を見れば何を考えているのか分かるような関係でした。しかし、新しい仲間が増えると「阿吽の呼吸」では限界がある。意思疎通のズレ、仕事の品質差、責任の所在――課題は次々と表面化しました。

特に痛感したのは「標準化」の必要性でした。
バッテリー交換一つにしても、作業のスピードや精度が人によってバラつきがありました。あるスタッフは慎重すぎて時間がかかりすぎ、別のスタッフは手際はいいが仕上がりが荒い。結果的にお客様に不信感を与えてしまうこともありました。

そこで私は、全スタッフが共通して従える「マニュアル」を徹底的に作り込みました。
分解手順を写真とイラストで解説し、作業時間の目安やチェックポイントを細かく明記。接客においても「まずお客様の目を見て笑顔で挨拶する」「修理前には必ずリスク説明を行う」といったルールを共有しました。

組織の基盤を整えるこの作業は、まるでゼロから「会社」を築き上げるかのような挑戦でした。


アキラとナナ、それぞれの役割

この組織化の過程で、アキラとナナの存在はますます大きなものとなっていきました。
アキラは冷静沈着な性格を活かし、技術研修のリーダーとして新人教育を担当。細かいチェックやフィードバックを欠かさず、スタッフからも信頼されていきました。

一方ナナは、持ち前の人当たりの良さで接客研修をリード。
「お客様は壊れたスマホを直しに来るのではなく、安心を買いに来る」
この言葉を合言葉に、笑顔と誠実な説明を徹底させました。ナナの姿を見たスタッフたちは自然と「お客様に寄り添う」という接客の本質を学んでいったのです。

私は二人の姿を見て、「この事業は私一人のものではなく、仲間全員で育てるものだ」と強く感じるようになりました。


レオの成長と次世代の芽

レオも、この頃から大きく成長していきました。
高校生ながら繁忙期には学校を早退して店を手伝い、バッテリー交換や簡単な修理を習得。お客様に説明をする姿は、まだ幼さが残りつつも頼もしさを感じさせました。

ある日、レオが接客をしていた時のこと。年配のお客様が「息子と同じくらいの子に助けてもらえるなんて、時代は変わったね」と笑っていました。その言葉を聞き、私は胸の奥が熱くなりました。レオにとっても、ここでの経験が「働くとは何か」を学ぶ貴重な場になったことは間違いありません。

次世代を担う人材が育ち始めている――その実感が、私にさらなる挑戦心を芽生えさせたのです。


トラブルと試練の数々

組織化の道のりは決して平坦ではありませんでした。
ある時は部品の在庫不足で、数十人のお客様を数日待たせてしまい、連日のようにクレーム対応に追われました。別の日には、経験不足のスタッフが修理中に基盤を破損し、店舗の信用が大きく揺らぐこともありました。

しかし、その度に私は「正面から向き合う」ことを選びました。
誠意を込めて謝罪し、時には自腹で端末を弁償することもありました。その姿勢を見てスタッフたちも「逃げない」姿勢を学び、チームとしての結束が深まっていきました。

困難を一つひとつ乗り越えるたびに、「組織」としてのスマホ119は強くなっていったのです。


そして「ネクストレボリューション」への伏線

スマホ119としての事業基盤が固まりつつあった頃、私は次のビジョンを思い描いていました。
「修理だけではなく、もっと広い意味で社会に役立つ事業を作りたい」

その頃から少しずつ耳にするようになったのが「ICT教育」「DX」といった新しい時代のキーワードでした。私は直感しました。
「スマホ修理は一つの通過点であり、本当の挑戦はこれからだ」と。

仲間たちにその思いを語ると、皆が目を輝かせてくれました。
「もっと大きなことをやりましょう」
「沖縄から全国へ、そして世界へ」

こうして、スマホ119からさらに進化した「ネクストレボリューション」誕生への土台が整い始めたのです。


まとめ

第13章は、スマホ119から「会社」への変貌を遂げる物語でした。
創業3人の小さな挑戦は、仲間を得て「組織」となり、数々の試練を経て成長していきました。

そこには、アキラやナナの支え、レオの成長、そしてお客様からの信頼がありました。
そして、この過程で芽生えた「もっと広く社会に役立ちたい」という想いが、後に「ネクストレボリューション」という新しい挑戦へとつながっていきます。

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