クーラーの効いた部屋から始まった挑戦
沖縄の灼熱の夏。羽毛布団の飛び込み営業で汗を流し続けていた私は、「もっと涼しい環境で挑戦してみたい」と思い立ち、テレアポ営業の世界へ移りました。
冷房の効いたオフィス、机に並ぶのは名簿と電話。
商品は学習教材や家庭教師サービス。営業の対象は、進学を考える家庭……のはずでした。
しかし現実は違いました。電話の先にいたのは、成績が悪く、このままでは高校にも進めない子どもを抱えた家庭ばかり。中間・期末テストで10点、30点という数字を並べ、学校では不良、先生の話も聞かない。家では母親の言葉にも耳を貸さない。もちろん家庭学習など一切していない――そんな家庭ばかりがリストに並んでいたのです。
「進学指導」ではなく「人生指導」
ある日、私は一人のお母さんから言われました。
「浩樹さん、うちの子に勉強しろって言っても全然ダメなの。お願いだから、うちに来て直接話してくれない?」
これがきっかけで、私は家庭訪問をするようになりました。
しかし、家に上がると待っているのは目も合わせない不良少年。両親の言葉など右から左へ受け流すような態度です。
そんなとき、私は両親に「席を外してもらえますか」とお願いしました。
そして少年と二人きりで話をしました。
「なぜ君の両親が勉強しろと言うのか、わかるか?」
「このままじゃ、高校にも進めない。義務教育が終われば、君は社会に放り出されるんだ」
「両親が老いたら、誰が面倒を見るんだ? 君しかいないんだぞ」
私は、自分の体験や失敗談を交えながら、少年の心に届く言葉を必死に探しました。
彼らが理解できる「未来」を見せるために、説得というより「人生の意味」を伝えたのです。
変化の瞬間
2時間後。
ついさっきまで不良の顔つきだった少年の目が変わりました。
「母ちゃん、俺、今日から勉強するよ」
お母さんが驚き、泣きそうになりながら私に頭を下げました。
その瞬間、私は営業という枠を超えて「人を変えることができる」という手応えを感じたのです。
この成功体験をきっかけに、私は単なる商品販売ではなく「家庭訪問で人生を変える」ことを使命と感じるようになりました。
全国1位の表彰
テレアポを始めて2か月目。
私は全国1,000名以上の営業マンの中で 堂々の1位 を獲得しました。
「沖縄から全国1位が出た!」
本社からも表彰され、海外旅行のご褒美まで与えられました。
数字だけではなく、家庭訪問の実績や「不良少年を勉強に向かわせた」というエピソードが社内でも話題となり、私は一躍注目される存在となったのです。
予備校の教育アドバイザーへ
この経験を経て、私はさらにステップアップを決意しました。
もっと多くの子どもたちをサポートするために、今度は 予備校の教育アドバイザー へ転職したのです。
ここでは家庭教師だけでなく、進学塾や予備校全体のプランニングに関わり、数多くの生徒を担当しました。
「今まで勉強が嫌いだった子を、どうやって机に向かわせるか」
その手法を磨き続けた結果、私はここでもすぐに 営業成績ナンバーワン を獲得。
表彰されるたびに海外旅行に招待され、若くして「成功」の味を知りました。
沖縄の教育格差への想い
しかし、順調なキャリアの中で、心に引っかかるものがありました。
「なぜ沖縄には、勉強に対する意識の低い家庭が多いのか?」
「どうすれば子どもたちがもっと未来を見据えられるのか?」
営業の現場で直面したのは、沖縄の教育環境の厳しい現実でした。
成績不振で将来を閉ざされかけている子どもたちの姿は、私自身の過去とも重なり、
見過ごすことはできなかったのです。
独立の決意
「もっと自分の手で教育を変えたい」
その強い思いから、私はついに 独立して家庭教師派遣会社を立ち上げる 決意をしました。
目標は全国展開。
ただ家庭教師を派遣するだけではなく、「人生を変える指導」を広めたい――。
この想いが、20代の私を走らせました。
振り返って
テレアポ営業で学んだことは数え切れません。
- 言葉だけで人の心を動かす力
- 不良少年の心を開いた説得力
- 教育を通じて社会を変えたいという使命感
- 数字で証明した全国1位の実績
これらは、後の起業家人生の礎となり、ネクストレボリューションへとつながっていく大切な布石となったのです。