第6章 羽毛布団の飛び込み営業で鍛えた営業力


商品ではなく「自分自身」を売る営業

アパレル業界で培った接客力を武器に、私は羽毛布団の飛び込み営業の世界へ飛び込みました。
営業車には羽毛布団がぎっしり詰め込まれ、住宅街へと繰り出します。

ただし、羽毛布団は誰も「今日買おう」と思っている商品ではありません。
ましてや仕事が忙しく、布団のメンテナンスに手が回らない独身や共働き家庭にとって、布団の優先順位は低いのです。

その現実に気づいたとき、私はアプローチを根本から変えました。
布団を売るのではなく、自分自身を売る。

玄関先でいきなり商品の話をするのではなく、世間話、趣味の話、悩み相談まで。
「お客様を笑わせ、楽しませ、気に入ってもらう」ことに徹しました。
まるで芸人のようにギャグを飛ばし、冗談を交えながら話すうちに、少しずつ「富村浩樹」という存在を覚えてもらえるようになったのです。

「どうせ買い替えるなら富村さんから買っとこうかな」
そう思ってもらえれば成功。月々3,000円の分割払いなら手が届く。
まるで今でいうサブスク感覚で、お客様に布団を契約していただけるようになったのです。


営業車での学びと仲間たち

毎日の営業車は、移動する「道場」でもありました。
先輩や同僚と一緒に、どうすればお客様を笑わせられるか、どんな話題で心をつかめるか、常にアイデアを出し合いました。

「今日はこのギャグでいこう」
「お客様の趣味を引き出す質問をしてみよう」

内はいつも笑いに包まれ、時には夢を語り合い、時には上司から成功哲学を聞かされる。
ただ商品を売るだけではなく、人としての在り方や考え方を学ぶ時間でもあったのです。


フルコミッションの現実

この仕事の給料はフルコミッション、つまり完全歩合制。
売れなければ給料はゼロ。
交通費も弁当代もすべて自腹。赤字になる日も珍しくありませんでした。

「売らなければ、弁当代、家賃すら払えない」
このプレッシャーは想像以上でしたが、だからこそ私は毎日必死でした。

営業から帰ると、疲れた体を引きずりながらも、営業の本や成功哲学の本を読み漁りました。
ナポレオン・ヒル、松下幸之助、本田健……誰の言葉でもいい。心を奮い立たせてくれるなら貪欲に吸収したのです。

この「本で学び、現場で試す」サイクルを繰り返すうちに、少しずつ自分の営業スタイルが確立されていきました。


ドアを叩くのが怖くなくなった日

最初の頃はインターホンを押すたびに緊張しました。
断られるのが怖く、心臓がバクバクしていたのです。

しかし「今日はどうやってお客様を笑わせようか」と考えるようになってから、ドアを叩くのが楽しみになりました。
お客様を笑わせ、喜ばせること自体が目的になると、不思議と営業の成果も伸びていったのです。

「営業とは商品を売ることではなく、自分を売ること」
この真理に気づいた瞬間、私は一気に飛躍しました。


羽毛布団営業で得たもの

羽毛布団の飛び込み営業は、過酷で厳しい現場でした。
けれども私はそこで、営業の本質をつかむことができたのです。

  • 自分自身を売る力
  • お客様を笑わせ、楽しませるコミュニケーション力
  • 仲間と共に成長する学びの姿勢
  • フルコミッションという極限の環境で培った覚悟

この経験がなければ、のちに全国1位を獲得する営業マンにも、
経営者として会社を築くこともできなかったでしょう。

羽毛布団は単なる商品にすぎませんでしたが、そこから得た営業力は、
私の人生を根底から変える「武器」となったのです。

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